『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』東海テレビ最新作 ふたりの死刑囚

2014年3月27日、ひとりの死刑囚が釈放された。


昭和41年、静岡県清水市(当時)の味噌会社で4人の焼死体が見つかった「袴田事件」。袴田は確定死刑囚となった。再審開始の決定は、有罪の決め手になった血に染まった衣服のDNA鑑定の信憑性。48年ぶりに釈放された袴田は、3歳年上の姉と生活を始めた。しかし、自由になったはずの袴田も、検察の即時抗告によって再審は始まっていない。いまだ死刑囚であることに変わりはなく、年金もなければ、選挙権もない。長年の拘置所生活による拘禁反応で、精神に障害が残っている――。

2015年10月4日、ひとりの死刑囚が獄死した。


昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」。奥西は35歳で逮捕され、死刑が確定したが、獄中から無実を訴え続けた。半世紀に及ぶ独房生活、その間、奥西は2桁を越える囚人が処刑されるのを見送った。ここ3年間は、八王子医療刑務所で寝たきりの生活を送っていた。奈良県の山村に暮らす4歳年下の妹は無実を信じ、片道5時間かけて兄のもとに通い続けていた――。

ふたりの冤罪を訴え続ける死刑囚とその家族の人生から浮かび上がるのは、「法治国家」日本の司法が裁いた、否、犯した罪だ。製作は東海テレビ放送。『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』の齊藤潤一が本作をプロデュースし、そのメガホンを鎌田麗香が引き継いだ。同作で奥西勝を演じた仲代達矢がナレーションをつとめる。奥西の無念の死を受け、緊急公開を敢行する。